鉄骨製作の概要
プロジェクトの概要
建物名称 | 東京スカイツリー® |
---|---|
建設敷地 | 東京都墨田区押上一丁目一番地 |
高さ | 634m |
構造 | 鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、 鉄筋コンクリート造 |
事業主 |
東武鉄道 株式会社 東武タワースカイツリー 株式会社 |
設計・監理 | 株式会社 日建設計 |
施工 | 株式会社 大林組 |
鉄骨製作 |
株式会社 巴コーポレーション 株式会社 駒井ハルテック 川田工業 株式会社 新日鉄住金エンジニアリング 株式会社 (製作・エンジニアリング幹事会社のみ記載) |
鉄骨製作の概要
相貫溶接部(分岐継手)
東京スカイツリー®の主な構造形式は鋼管トラス構造で、鋼管同士が角度を持って接合されています。鋼管同士の接合部は3次元曲線となることや、溶接部が鋭角な部分と鈍角な部分が混在することから、工場製作にあたっては斜めに取り合わせる加工や溶接施工に関する非常に高い精度・技術が要求されました。
当社が鉄骨製作に携わった部位は、大きく分けると01.ゲイン塔、02.天望回廊、03.天望デッキ、04.外塔部(主にW1工区)、05.地下基礎部の5つに区分されます。当社が担当した鉄骨製作重量は約9,000tになります。
長寿命かつ容易には部材の取り換えができないという建物の性質上使用される鋼材には、従来の建築鉄骨のような、残留変形を許容しながら大きなエネルギー吸収を行う「塑性変形性能」よりも、できるだけ高い応力まで弾性で残留変形を発生させない「高降伏点性能」が優先され、主要鋼材には新規開発鋼材の高降伏点鋼が採用されました。製作部材の寸法と使用鋼材の降伏点強度は以下のとおりです。
部位 |
ゾーン |
外径×板厚(mm) |
鋼材の降伏点 |
形状 |
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柱材 |
鼎トラス |
P-711.2Φ×28~ |
325,400,500N/mm2級 |
円形 |
外塔 |
P-1100Φ×25~ |
325,400,500N/mm2級 |
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ゲイン塔 |
P-900Φ×25~ |
325,400,500N/mm2級 |
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斜材 |
外塔 |
P-508Φ×16~ |
235,325N/mm2級 |
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ゲイン塔 |
P-300Φ×22~ |
325,400,500N/mm2級 |
||
水平材 |
外塔、鼎トラス |
P-267.4Φ×12~ |
325N/mm2級 |
|
水平連結トラス, |
BX-300×300×9×9 |
325N/mm2級 |
角形 |
塔体主要部の円形鋼管の最大断面・強度は径2,300mm、板厚100mm、降伏点強度500N/mm2級の鋼材が用いられました。また、ゲイン塔主要部の円形鋼管の最大断面・強度は径1,200mm、板厚80mm、降伏点強度630N/mm2級の鋼材が用いられました。
なお、地上部鉄骨の現場搬入第一号は当社が製作した部材でした。
- 最大サイズ鋼管(径2300mm、厚100mm)
- 地上部鉄骨搬入第1号部材
今回は使用板厚が極厚であることや、主要鋼材に新規開発鋼を用いていることなどから、材料及び溶接部の確性試験、溶接技能者の技量付加試験が課されました。
確性試験は母材・シーム溶接部・周継溶接部・相貫溶接部を対象としており、それぞれについて引張試験、シャルピー衝撃試験、成分試験など、また溶接部については加えてマクロ試験、ビッカース硬さ試験、y型割れ試験などを行い、高強度鋼の機械的性質及び溶接部の健全性を確認した上で、これらの試験に基づいて定められた溶接施工要領に従って実施工を行いました。
鉄骨製作における課題と対応
ゲイン塔
ゲイン塔は、塔本体に取り付くG1~G3節、塔本体から突出するG4~G17節から構成されています。使用する材料は、本工事で使用される鋼材の中で最も降伏点強度の高い630N/mm2級鋼材。ゲイン塔はリフトアップ工法による施工となるため、順序としては上部から下部へ向かって製作する工程となりました。
ゲイン塔最上部のG17節には、制振装置「頂部TMD」が設置され、これはゲイン塔の風揺れを低減させる非常に重要な役割をしています。この頂部TMDおよびTMD機械室の設置は、サイズの関係から塔体最上部で組み立てを行い、下から上がってくるゲイン塔最上部と塔体最上部で合体させるという方法が取られました。
当社が製作した部分のうちG16節は頂部TMDと取り合う節であり、部材の製作精度が頂部TMDの設置にも大きく影響します。また、G3節は、塔本体最上部の47節と取り合う節であり、ゲイン塔の外周径が変化する節でもあるため、部材の製作精度がゲイン塔全体の建方精度に大きく影響する部位になります。
そこで、各工程での精度確保を行ったうえで、G16節、およびゲイン塔G3柱と塔体最上部(47節)との取合いについて仮組を行い、建方に支障の無い精度が確保されていることを確認した上で出荷しました。
- ゲイン塔G3(47)節の仮組
- ゲイン塔G16節の仮組
天望回廊
天望回廊は、逆円錐状の外形をした展望台本体の外側に、らせん状の展望通路が取り付けられています。
展望台本体は斜めの円形柱と同角度のウェブに水平のフランジが取り付く変形BH梁により構成されるほか、回廊部は逆円錐型の展望台に沿ったらせん状のスロープとなっており、構成する部材に共通性がないものが多くなっています。
このため、アーチ型鋼管柱や、中心からの距離が変化し部材ごとに形状の異なる床梁の精度確保は難易度が高いものになります。そこで、床梁は放射状の位置を変化できる組立治具を用いることで、隣り合う梁と一体に組立しながら製作することにより、二次部材の取り付け角度・位置精度を確保して、取り合いを確認しながらの製作を可能としました。
- 天望回廊~変形BH梁
- 天望回廊~アーチ型鋼管柱の製作
- 天望回廊~床梁の製作
- 天望回廊~回廊部形状
天望デッキ
天望デッキは3層構造となっており、地上350m、345m、340mの3フロアから構成されています。
天望回廊の本体と同じく、外形は逆円錐状で、外形に沿って斜めに配置される円形鋼管柱に水平の変形BH梁が外ダイアフラムを介して取り付けられます。実施工にあたっては、外ダイアフラムの開先形状の変更を提案して、溶接部の作業性向上と品質確保を同時に実現することができました。
- 天望デッキ(水平梁外ダイヤフラム周辺)
外塔部
外塔部の下部は、部材サイズが非常に大きく、板厚も極厚なため、溶接量は必然的に多くなり、溶接歪が大きくなります。さらに主管に対して枝管が様々な方向、角度で取り付く鋼管トラス構造であるため、工場製作の時点でかなり厳しい精度管理を行う必要がありました。
鋼管同士が斜めに取り合う主管と枝管の分岐継手部分における枝管側の切断形状は3次元曲線となるため、切断と開先加工においては本工事用の加工プログラムを搭載したパイプコースターを活用しました。
また、各部材製作の際には、3D CADにより作成した巻き型を用いて罫書きを行い、組立用治具を用いることで精度の確保および施工性を向上させました。
分岐継手の相貫溶接は、部分溶込み溶接部と隅肉溶接部、またそれらの移行部が存在するため、各部(トゥ部、サドル部、ヒール部)で溶接接合部の強度確保の脚長管理値が異なってくるため、以下のように脚長管理方法をプロセス化し、品質を確保しました。
01. 組立前
主管側に、枝管接触位置、枝管板厚、脚長予定線を罫書き、枝管側に脚長予定線を罫書き、脚長予定線上のポンチマークは残します。また脚長予定線より一定距離の位置に脚長検査用の捨て線を罫書きします。
▼枝管接触位置、枝管板厚位置の罫書き(主管側)脚長予定線、脚長検査用捨て線の罫書き(主管・枝管)
- 罫書きとポンチマーク打刻
(主管側) - 罫書きとポンチマーク打刻
(主管側) - 罫書きとポンチマーク打刻
(枝管側)
02. 組立時
枝管の精度、及び、組立精度の誤差による脚長不足が無いことを確認するため、合わせ型により脚長予定線のチェックを行います。
▼合わせ型による脚長予定線のチェック(組立誤差による脚長不足が無いことを確認)
- トゥ側
- ヒール側
- サドル側
03. 溶接後
脚長予定線上のポンチマークが溶接ビードで消えていることを確認した上で、捨て線位置から溶接ビード端までの距離を計測し、一定距離以下であれば脚長が満たされているとします。
▼脚長予定線上のポンチマークが溶接ビードで消えていることを確認した上で、捨て線からビード端までの距離により脚長を測定します。
- トゥ側
- ヒール側
- サドル側
お問い合わせ
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