名古屋市科学館プラネタリウム
概要
- 名古屋市科学館は、JR名古屋駅から南東約2kmの白川公園内にあり、名古屋市の中心街に位置します。科学館の理工館と天文館は、建築後50年近く経過して老朽化し、バリアフリー、耐震性、大型展示などに課題があった為この度改築されました。
- 新科学館は、世界一大きなプラネタリウムを内蔵した球体と、その球体を東西から空中で支持する2棟の建屋で構成されています。プラネタリウムのスクリーンになる球体の上部は鉄骨立体トラスと鋼管による混合構造で、立体トラスにはトモエユニトラス(システムトラス)が採用されました。4階、5階、6階の3層構造になる球体の下部は、鋼鈑・形鋼を用いたトラス構造としています。
建物概要
建設地 | 愛知県名古屋市 |
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建設主 | 名古屋市 |
設計・監理 | 名古屋市住宅都市局営繕部住宅・教育施設課 |
設計・協力・一部構造共同監理 | 株式会社日建設計 |
施工 | 竹中工務店・TSUCHIYA・ヒメノビルド特別共同企業体 |
鉄骨 | 株式会社巴コーポレーション |
主要用途 | プラネタリウム、展示室 |
屋根構造 | 鉄骨トラス構造(一部トモエユニトラス) |
支持構造 | 鉄骨構造 |
規模 | 直径38.2m(上部半球トラス上弦材芯) |
建方年度 | 2010年 |
構造概要
球体の大きさは、球体内部に直径35.0mのプラネタリウムのスクリーンが設置されるため、上部半球のトラス上弦材の中心で直径38.2mになります。球体の架構は、上部半球と下部半球で異なった構造となっています。
プラネタリウムのスクリーンとなる天井とGRC(ガラス繊維補強セメント)などの外装材が取付く上部半球の架構は、トモエユニトラスと曲げ加工した鋼管を用いた二層立体トラス構造です。立体トラスの網目は、球体頂点部より放射状に設けられており、一部を除いて連続した四角錐体で構成されています。ただし、上弦材は、円周方向の部材がなく、放射方向の部材のみです。下弦材の長さは約1.7~4.8mで、トラスせいは約1.0mです。上弦材は、曲げ加工した厚肉の鋼管φ-216.3x12.7(STK490)であり、仕上材のファスナー(固定用部材)が直接取付いています。下弦材と斜材は、トモエユニトラスで、鋼管部材のサイズは、斜材がφ-101.6x3.2~φ-165.2x4.5、下弦材がφ-101.6x3.2~φ-165.2x4.5です。
下部半球の外周架構は、一般的な鉄骨によるトラス構造で、地球儀の経線と緯線のように配置したH形鋼部材と異形部材、およびその間に斜めに配置した鋼管部材で構成されています。したがって、トラスの各接点には、外周架構だけで4本または8本の部材が接合しています。この外周架構は、4階、5階、6階に配置された床梁を支持しています。また、5階と6階の位置で東西2棟の建屋に接合されており、球体と建屋の通路口の周りには鋼板壁が設けられています。なお、外周架構のH形鋼が直線部材であるのに対して、外装材のGRCが球体曲面であるため、H形鋼に取付けるファスナーの形状は、種類が多くなっていますが、基本構成を揃えるなどにより合理化しました。
製作概要
製作では、鉄骨架構が球体をしているため、精度が悪いと組み立てた際に"球体として閉じない"可能性があります。用途がプラネタリウムという事から"球体である必要"が重要視され、組み上げた際に"丸い形"にするためには閉じた形状ではない建物の場合と比較して、より一層各部品の精度確保が重要であったため、様々な対策を施しました。
- 上部半球上弦材の精度確保
- 上部半球の上弦材は、曲げ加工した鋼管の罫書と切断を同一段取で行うことにより、製作精度を確保しながら効率的に行いました。また、鋼管に取付くガゼットプレートとファスナーの組立は、製作用治具を作製するとともに、3次元CADの巻き型を使用することにより、製作精度を確保しました。
- 下部半球トラスの精度確保
- 下部半球のトラス接合部は、外部架構の部材だけでなく、床梁および柱が3次元的に取付くため、部材組立用治具を作製するとともに、各部材の角度および対角寸法を計測管理することにより、製作精度を確保しました。
- 部分重複仮組の実施
- 製作精度を確認するための仮組は、球体全体での安定した組立は難しいため、また、工期の短縮を図るため、部分重複仮組としました。最初に出荷の早い4階~5階間の60度範囲の部材を天地逆さまにして仮組しました。
- 次に後出荷となる5階~6階間の60度範囲の部材を仮組しました。
- 最後に上部半球の立体トラスを仮組して、製作精度を確認しました。すべての仮組において、安全と精度確保を考慮し、固定用および梁受け用の治具を製作しました。精度の高い部分重複仮組を実施したことにより、現場の建方は円滑に行われました。
工場制作写真
1.柱と6階大梁コア部高規格材の本溶接
2.鋼鈑壁板の本溶接
3.柱と6階大梁コア部高規格材の本溶接
4.外弦材と5階梁コア部の大組立
5.球体底面部材の大組立
6.球体底面部材の本溶接
建方概要
1.柱と6階大梁コア部高規格材の本溶接
2.下部球体ボルト締付状況
3.上部球体施工用足場組立状況
4.下部球体施工完了
5.上部球体鉄骨施工状況
6.上部球体鉄骨施工完了
7.上部球体鉄骨施工完了
8.下部球体仕上げ施工状況
鉄骨トラスの建方は、建物外部に設置した120tonクローラクレーン1機と、西側建屋用の180tonタワークレーンを用いて行いました。
下部半球の部材の組立は、建方キャンバーを与えながら、ベント支柱で、球体外殻の31節点を支持して行いました。その際、地組を有効に行うことにより、球体精度の確保と高所作業の低減を図りました。
上部半球の部材の組立は、枠組足場を用いた総ステージの上に設置したジャッキで、鉄骨トラス下弦を支持して行いました。その際、ブロック工法を採用することにより、高所作業の低減と工期短縮を図りました。 なお、球体の建方において、施工時解析に基づく管理を行うことにより、高い施工精度を確保致しました。